――復帰するにあたって「復帰プログラム」というものをされたそうですが?
「復帰プログラム」というもの自体は主催する団体によって異なります。私が行った某病院の復帰プログラムは、6週間の入院プログラムと概ね4ヶ月程度(➕α)の復帰訓練によって構成されていました。
入院プログラムは、先ほど出てきた心理検査やカウンセリング、心理士とのセミナーやリラクゼーションのための運動などが主だったものでしたね。
院内でのセミナーでは、物事のとらえ方や考え方について、理論の部分を教えてもらいました。自分との向き合い方という点で学ぶことも多かったです。
入院と言うとずっと病院の中で生活すること想像されるかもしれませんが、定期的に外出も行いましたし、むしろそれを促されていました。私の場合は水泳がマッチしていたようで、頻繁にプールに通って泳いでいました。
入院プログラムを行うと、病院という非日常空間に身を置くことになります。ですので、周囲の人のことを考える、というより、自分のことを考える、という時間が長くなります。
この入院プログラムを行っている期間の中で、強く印象に残っている日があります。その日は何となく上手くいかないことが重なった日でした。その理由を自分に問いただしたわけではありませんが、心の芯から自分と向き合って、ボロボロ泣いてしまいました。
入院プログラムでは真正面から自分とかかわることが出来ました。もしかしたらその日が、自分との付き合い方が少し変わった点だったのかもしれません。
反対にある看護師さんが言っていたのは、「入院中は自分のことを考えていい時間だけれど、退院したら、周りの人のことも考えていかなくちゃならない」「(入院中は食事などの管理もしてもらえるので)退院して自分の身の回りのことを、いきなりすべて自分でやることになるとそれでまた不安定になってしまう人もいる」「社会とのつながりが薄くなっていたと思うけど、少しずつ考えられるようになるといいですね」と。
入院プログラムも終盤になると、このように、徐々に社会とのつながりにも視点が移っていきます。
復帰訓練は、所属校での復職に向けた訓練です。学校への通勤や、校内で簡単な事務作業等に慣れる第1段階、他の学級や教員への補助を中心とした第2段階、フルタイムで補助を中心に数時間の授業も行い、復職へ向ける第3段階から成っています。
第1段階、第2段階は一か月程度、第3段階は一か月半程度の期間で行いました。第2段階を行う時期ぐらいになると、自分の気持ちも大分安定してきましたし、自分の気持ちを言語化・相対化して落ち着かせられることも多くなりました。
またこの第3段階が終わると復帰プログラムも終了となるのですが、その後も生活や職務のリズムを崩さないために、強制ではありませんが自主訓練として第3段階の状態を維持することを病院の方から勧められました。
このプログラム中に力づけてくれた言葉の一つに以下のようなものがありました。
“「立ち止まってこそ、見えるものがあります」-軽井沢高原協会の牧師さん”
この時期に立ち止まれたからこそ、気付けたことも多くありました。私にとって、非日常の病院という空間で、自分のことを見つめ、過去を捉え直し、社会と自分がどう関わってきたのかを考えることは、とても大切な時間でした。
――ありがとうございます。同じ悩みを持つ方へ、家族や親しい人がそういう状況になっている人へメッセージがあれば教えてください。
「辛い思いをしたんですね」「苦しい思いをしているんですね」と、共感してもらえる存在になってもらえたら、と思います。もし、周りにそういう人がいるのなら、これらの一言でその人たちは救われるのではないかと思います。
もし同じような悩みを抱えている人がいたら、休養できる範囲で休養してほしい。私は「クレペリン検査」という、単純計算を繰り返して作業量や正確性を予測する検査を受けた際、他の人に比べて「休憩」の効果がはっきり出るタイプだと言われました。そのときに、「今休んでいるのはこれから伸びるための蓄えだ」とその結果を受け取ったことを覚えています。
このクレペリン検査の休憩効果ではないですが、人生の中での「休憩」も必要な時間だと思います。休憩することが悪いのではなく、休養する時間を自分の中でいいように捉えたり・価値付けたりできればいいのかなと思います。(その時できなくても後でできるのでももちろんいいので。)
(了)
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