先生の悩みインタビュー~仕事だけに向き合った辛さと、趣味が教えてくれたこと~②

(1)からの続き


―――大変な日々を過ごされていたことがお話から想像できます。何か環境が変わるきっかけはありましたか?


私の好きな「世界にひとつのプレイブック」という映画に出てくる「5点で喜んでもいいじゃないか」という言葉がきっかけになったのかもしれません。


体の調子も僅かながら回復期になり、真っ先にしたことが好きな映画を見るということでした。趣味が映画鑑賞だったので。だったというのは、社会人になってからはめっきり映画を見ることをしていませんでした。仕事が1番、趣味は2番だったので。


「5点で喜んでもいいじゃないか」というこの言葉の意味ですが、主人公たちはダンスコンテストに出場した際、5点を目標にして挑んでいました。10点満点のコンテストなので点数が発表された瞬間、周りの選手が主人公たちを慰めようとする中、主人公たちは大喜びするんです。他人から決められた指標ではなく、自分で決めた指標をクリアする。それが周りから見てどんなに矮小だったとしても、自分が達成したなら喜んでいいじゃないか、満足していいじゃないか。こんな価値観は私にはなかったので、とても感銘を受けました。


それからは様々な映画を今でも見て、趣味が1番、仕事は2番以下という生活にシフトしましたね。もちろんこの作品のブルーレイは我が家にあります(笑) 



また、体を動かす習慣を取り戻すようになってでかけた際、ジムのパンフレットに書いてあった「思考は変えられないかもしれない。しかし、身体は必ず変わる」という言葉にも大きな影響を受けました。気がついたら入会していました(笑)


以前は、仕事をバリバリやることが第一!という思考でしたし、なにかショックなことがあると「こんな考え方してちゃだめだ!見直そう!」という状態に陥ってしまいがちでした。それも自分を責めてしまう要因だったのかもしれません。しかし筋肉は、トレーニングを適切に行って、食事をとればすぐに応えてくれます。他人がどう言おうとサボればできない、続ければできるという部分が私には合っていたのかもしれません。


仕事の場面では、比較対象が他人や社会的な立場や収入のように、どうにもできない部分があるかと思います。しかし、トレーニングは、比較対象は1週間前・1ヶ月前の自分なのですぐに成果が見えます。


そうしてトレーニングを続けた結果不思議な事も起こりました。


身体はもちろん変わりましたが、なんと思考も変わったのです。あれだけ怖かった他人からの視線や評価がどうでも良くなりました。トレーニングでベストを尽くすことが楽しくてしょうがなくなると、極度に高かった「仕事で成果をあげる」ということの位置づけが少しづつ変わっていきました。言い換えると、仕事で成果を上げることを気にしすぎないようになりました。



―――趣味を再確認したり、新たに発見したりしたんですね。そのようなきっかけがあって、今はどのように過ごされていますか ?


現在は、趣味の時間をとても大切にしています。私は映画鑑賞と筋トレが趣味で、人生の中で最も大切にしていきたいものとしています。以前熱を上げて活動していた研究会もすべて退会し、原稿依頼や研究会の講師等も断りました。代わりに平日は帰りにジムに寄ってトレーニングをしています。友達や仕事の同僚にも「昔は心療内科に通ってましたが、今はジムに通っています」と語っています。


また、土日は映画を2〜3本鑑賞して、映画つながりでできた友達と趣味について語り合っています。職業はみんな当然ばらばらなので、仕事の話など一切しないというのが良いのかなと思います。純粋に好きなものについて語り合う。これ以上の関係はないと思っています。今の私にとって大切な場です。



―――これからの生活で気にしていきたいことはありますか。


自分については、これまで通り趣味を大事にして生きていきます。


また、現在は臨床心理についても学んでいますので、私と同じ境遇になった方に寄り添いたいという思いもあります。個人的に相談を受けた方で一緒にジムに行って汗を流し、回復してきたという方もいるのが嬉しいですね。


まずは私と同じ境遇の方には、自身の経験から「仕事は彩りであって人生の核ではない」ということを伝えたいです。教員という仕事で考えれば今の私の立場は、大きく出世したり、名声を得たりできるポジションではないと思います。以前の私は仕事上でこんな立ち位置絶対イヤだと思っていました。


しかし、今思うことはそんな自分より、今の自分の方がずっと幸せであるということ。昨年、トレーニングの成果としてコンテストに出場した際、様々な方に応援をいただきました。その時、これを実感しました。人生を豊かにするものは仕事で成功することではなく好きなことを続ける、好きで居続けることなんだなと今では確信を持って言えます。



―――ありがとうございました。仕事だけの生活ではなく、趣味や仕事以外の目標があると、豊かな生活に近づくのでしょうか。

もし周囲や、或いは自分からの期待に押しつぶされそうになったら、この方のように考えてみるのも良いのかもしれません。


(了)

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